【読書】西加奈子さんの『i』は他の人の感想を聞きたくなる
こんにちは、はるのゆきです。
西加奈子さんの『i』を読みました。
ネタバレを含みます。
あらすじ
アメリカ人の父と日本人の母のもとへ、養子としてやってきたアイ。 内戦、テロ、地震、貧困……世界には悲しいニュースがあふれている。なのに、自分は恵まれた生活を送っている。 そのことを思うと、アイはなんだか苦しくなるが、どうしたらいいかわからない。 けれど、やがてアイは、親友と出会い、愛する人と家族になり、ひとりの女性として自らの手で扉を開ける―― たとえ理解できなくても、愛することはできる。
世界を変えられないとしても、想うことはできる。 西加奈子の渾身の叫びに、深く心を揺さぶられる長編小説。Amazon 内容紹介より
感想
- どんな作品?に答えるのが難しい
本作は、題名である『i』がテーマとなっています。
『i』とは何か?
⭐︎虚数の『i』
⭐︎英語で私を意味する『I』
⭐︎日本語での『愛』
⭐︎アイデンティティの『アイ』
全てのiを絡めながら進んでいく物語が、心に響きます。
心に響く?どんな風に?と聞かれると、答えるのが難しい…
底抜けに明るい話ではないので、“面白かった”は違う気がする。色々あったけどハッピーエンド!な話でもないので、“感動”も違う気がする。“悲しい”でも“驚愕”でも、“幸せ”でもないし…
こんなに読後の気持ちを言い表すのが難しい作品って、なかなか無い気がします。(私の語彙力が無さすぎるのか?)
とにかく「読んで良かった」「心に響いた」ことは確かです。読後しばらくは、色んな感情で心がぐるぐる掻き乱されて、眠れなくなりました。
- 印象に残ったセリフ
物語の中で、主人公のアイが自身の存在意義について悩むのですが、アイが悩む理由として様々な出来事が起こります。
養子縁組、世界の貧困、東日本大震災、LGBTQ、結婚、不妊…などなど。
そのため読む人によって、どのトピックに心を打たれるか、どのセリフが印象に残るかは変わってくるだろうなーと思います。
私は世界情勢や貧困については詳しくないもので…その辺りの話は、こんなことがあるんだな〜ふむふむと、軽くなぞり読みをしていました。
(西加奈子さんはきっと、貧困やLGBTQについて訴えたかったはずなのに、すみません…。)
私が一番印象に残ったのは、妊娠に関するストーリーです。
不妊に悩むアイと、中絶を考えている親友のユウ。アイとユウは、真逆の境遇に立たされたせいで、仲違いをしてしまいます。
そんな時、ユウがアイにあてた手紙に、こんな一言があります。
私の決意と、みんなのからだのことは別のことだから。私のからだは、私のものだから。
この文を読んだ瞬間に、あー、この言葉が欲しかったんだー!!!と思いました。
これって妊娠だけではなく、全てのことに当てはまりますよね。
- 私の場合
今私の周りには、年齢を重ねて、結婚出産をする人と独身を謳歌する人とに分かれています。
結婚組は「独身の子の前で結婚生活の話するの申し訳ない…」という雰囲気。
独身組は「人生楽しんでるのに勝手に“可哀想”扱いされるの何で?」という感じ。
見えない壁ができているのです。
そのモヤモヤとした見えない壁が私は苦手で苦手で…
別にいいじゃん?どっちが上も下もないし、遠慮せずに楽しく話そうや!学生時代みたいに気兼ねなく仲良くしようや!と常々思っていたのです。
そんな時に出会ったユウの言葉。
『私の決意と、みんなのからだのことは別のことだから。私のからだは、私のものだから。』
私は私、あなたはあなた。自分のことは自分で決めるし、そこに罪悪感を感じる必要はないよ。
この言葉がアイに響いたように、私の心にもガツンと響きました。
(もちろん、不妊は自分で抗えない問題であり、自己決定できる結婚とは質が違うものです。あくまでも、ユウのセリフ単体を切り取って私が感じたことを書いています。)
- 芯を持ちながらも想像すること
物語の中にあるように、相手の気持ちや立場を「想像する」ことってすごく大切です。
「想像」のない世界に、愛はないから。
でもアイのように、優しすぎるばかりに想像しすぎてしまい、自己と他者の境界を曖昧にする必要は無いと私は思います。
「想像」はするけれど、ユウのように「私は私」としっかり芯を持っておくことが大切。私はそういう人間になりたいと思いました。
みなさんは、この『i』を読んで、どのセリフに心を打たれましたか?
どんな人間になりたいと思いましたか?
色んな方の感想を聞いてみたくなりました。
はるのゆき