はるの本棚

口下手な私の人生と推し本について。

今村夏子さんに感化され小説を書きたくなりました

こんにちは、はるのゆきです。

 ここ数ヶ月、読書に耽っていました。夏の終わり頃から異常な読書欲が沸き、SNSを更新する余裕がないほど活字に溺れていました。

 往々にして、私が何かに没頭するのは、日常生活でままならない苦しいことに直面している時です。宇佐美りんさんの『推し、燃ゆ』をお読みになりましたか?社会生活が苦しければ苦しいほど、推しに心と体を委ね没頭していく感じ。生きるために必要な現実逃避。私は昔から、そういった意味合いで読書に耽ることがよくありました。しかし、ここ数ヶ月の読書欲は、これまでのような「現実逃避を含む推し活」要素が低かった。

 近ごろ私を突き動かしていた感情、それは『小説を書きたい!!』という突拍子もない、しかし昔から密かに抱いていた夢でした。

 

 初めて小説を書くこと知ったのは、小学校5年生。その頃クラスで唯一仲のよかったAちゃんと交換日記をしていました。日記を届けに我が家を訪れたAちゃんを部屋に上げ、遊んでいるうちに「本書いてみたいね」という話になったのです。どちらが言い出したのか、何がきっかけだったのかは分かりません。私か彼女どちらかの気まぐれな発言が、2人の間に爆発的な共感性を生み出し、その日のうちに短い小説を書き上げました。親にばれないようにヒソヒソとストーリーを話し合い、拙い文章で綴った物語。内容はうろ覚えですが、主人公のハリネズミが森の動物たちと交流する、友情小説だったと思います。私とAちゃん2人の間で完結した小さな出来事。しかしそれは、小説は読むだけでなく書いてもいいのだという認識が私の中に芽生えた瞬間でした。

 

 それ以降も小説を書きたくなることは何度かありましたが、勉強が忙しい、仕事が忙しい、育児が忙しいと優先順位を下げ続け、本格的に手をつけることはありませんでした。小説を書き上げる忍耐力が自分に無いことに、薄々気が付いていたのだと思います。

 

 さて、そんな私がなぜ今、改めて小説を書きたいと思うに至ったのか。

 一瞬の強い起爆剤があったわけではありません。それは、じわじわと心の隅を突かれ続けるような感覚でした。始めに感じたのは、今村夏子さんの「あひる」を読んだ時。「あひる」は一種の日常小説で、大事件が起こるわけでも、誰かの人生が激変するわけでもありません。家にやってきた一羽のあひるが、家族の生活を少しずつ変えていくというもの。しかし今村夏子さんの文章力をもってすると、何気ない日常のワンシーンが、心をざわつかせる歪で不安な雰囲気に様変わりするのです。ストーリーではなく文章力で雰囲気を作り出す。何だこの小説は!!と胸がザワザワして落ち着かない感覚を味わいました。文章の持つ芸術性が人の心を動かす。これが純文学か、と府に落ちました。文章ってすごい、小説ってすごい。これまで沢山の小説を読んできたのに、ここまで強く、文章そのものに心を惹かれたのは初めてでした。それから今村夏子さんの小説を読み漁り、村田沙耶香さんや宇佐美りんさんなど純文学作家に触れ、表現の巧さに感動し続ける日々が続きました。

 

 同じ風景を描写するにしても、作家さんによって選ぶ言葉、切り取るポイントが異なります。人物描写も同じで、その描き方に作家さんの人生観が大きく関係しています。絵画や音楽と同じですね。

 小説ってストーリーに注意が向きがちですが、文章表現に作家さんの命が詰まっている。その面白さに気が付きました。この作家さんはどんな人生を歩んできたんだろう。この文章にどんな意図を込めたんだろう。一つ一つの文章に宿る意味を考えるのが楽しくなりました。ストーリーを追うよりも、言葉の連なり、文章の美しさに注目するようになりました。そして次第に、「私だったらこの風景をどう言語化する?」と自分で文章を生み出すことに興味を持ち始めたのです。

 

 初めて小説を書いた小学校5年生の私。あれから約20年が経ちましたが、あの頃と同じような情熱が自分の中に宿っているのを感じます。文章の持つ力に心惹かれている今、小説を書きたい。上手く書けなくてもいいから、何かを表現してみたい。この想いを大事にしたい。

 仕事と育児に追われる日々の中で、この心の灯火が消えないよう、決意を込めてブログにしたためました。

 

 このブログでは引き続き、読んだ本や場面緘黙症について綴る予定です。その合間に、執筆に必要な文章表現についての記事も挟むかもしれません。これまで以上にマニアックなブログになりそうですが、興味のある優しい読者様がいらっしゃいましたら、隙間時間に覗いていただけると嬉しいです。

 

 長く拙い文章を、最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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はるのゆき