【エッセイ】痴人の愛 ナオミちゃんって身近にいるかも
私の職場には、人たらしな同僚がいます。
噂ではパパ活をしているらしい。
年齢と収入にそぐわない、高級なバッグや化粧品をいくつも持っているから。職場の男性陣を、掌の上で転がす巧みな話術とシナ作りを心得ているから。
女性受けが悪くても、その子はいつでも幸せそう。男性にチヤホヤされることが、彼女の自尊心を作り上げている。綺麗でいること、若々しくいること、それが彼女の生きる意味。
それはそれで幸せなのかなぁ。
男性に可愛がられるのが生き甲斐で、それを喜ぶ男性がいる。まさに需要と供給の一致。
私のように、日々を怠惰に、己の楽しい世界のみで生きている人間より、よっぽど世のため人のためになっているのではないか。
彼女の一挙手一動に救われ、つまらぬ灰色の日常が薔薇色とまではいかぬとも薄桃色ぐらいには変化する男性がいるのだから。
私にはできない。
男性が苦手で、男性が側にいると「こんな私ですんません…」と自意識過剰なほど罪悪感を感じてしまう人間ですから。
白昼堂々、人目も気にせずシナを作れるその同僚のことを、異世界の生物のような目でみてしまいます。
谷崎潤一郎の『痴人の愛』を読んだ後、その同僚のことが一番に浮かびました。
その同僚ならきっと、譲治さん、及び谷崎潤一郎のことも手玉に取れる気がするわ。
ナオミズム、それは世代を超えて、きっと遺伝子レベルで選ばれし女性に付与される、特殊な力。
もしも私に付与されていたら…第二の譲治さんを生み出してしまうのだろうか。今の生き方が性に合っているから、何とも想像できないな。
はるのゆき