【読書】そして誰もいなくなった 結末を知っているのになぜこんなにも面白いのか
こんにちは、はるのゆきです。
3月になり暖かくなると、晴れやかな気持ちになりますね。子どもとのお散歩も楽しく、休日はウキウキと過ごす日々です。
最近の読書時間はもっぱら朝。
子どもが目を覚ますまでの短時間、いかに読み進められるかが勝負です。
平日は仕事の疲れで早起きできないことも多く…たまに作れる読書時間を有効に使うようにしています。
さて、最近読んだのは、王道のミステリーであるこの作品。
アガサクリスティの『そして誰もいなくなった』
日本でも、人気が高いだけでなく、様々なオマージュ作品が出ていますよね。
有名なものですと、青柳碧人さんの『むかしむかしあるところに死体がありました』や、綾辻行人さんの『十角館の殺人』など。
読めばすぐに、『そして誰もいなくなった』のオマージュだと分かります。
そんな有名すぎる作品なのに、本家をちゃんと読んだことが無いぞ!と気付きまして…
このミステリー熱の高まっている今、読むしかないと思い立ち、手に取りました。
あらすじ
その孤島に招き寄せられたのは、たがいに面識もない、職業や年齢もさまざまな十人の男女だった。だが、招待主の姿は島にはなく、やがて夕食の席上、彼らの過去の犯罪を暴き立てる謎の声が……そして無気味な童謡の歌詞通りに、彼らが一人ずつ殺されてゆく! 強烈なサスペンスに彩られた最高傑作!
Amazonの商品紹介より抜粋
本作はあまりに有名すぎるので、読んだことがなくとも大体のあらすじは知っていました。
オマージュ作品を読む機会も多く、おそらく原作もこんな感じなんだろうな、と予想しながら読み始めました。
それでも!
先が読めているのに!
こんなにハラハラドキドキ、自分自身も追い詰められているかのような臨場感を感じながら、最後まで息がつけない作品は初めてでした。
クローズド・サークル作品の魅力
本作は、クローズド・サークルミステリーの代表作と名高いものです。
「クローズド・サークル」というミステリー用語、皆さんはご存知ですか?
定義としては、“何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品。”とされています。
本作のように、孤島に集められた人々が殺人事件に遭遇するが、外は嵐で助けが来ない。その場で事件と向き合うしかない状況は、まさにクローズド・サークルですよね。
クローズド・サークルな上に、登場人物全員が殺される可能性が示唆されており、実際に一人ずつ殺されていく。そして犯人は自分たちの中にいるとしか考えられない。
誰も信じられず、恐怖にじわじわと侵食される人々。その心理描写や恐怖がリアルすぎて、読んでいて自分もその場にいるかのような感覚に陥ります。
犯人は確かにその中にいますし、犯人当ての伏線も存在します。それでも最後の最後まで犯人が分からない…(これ予備知識なし・初読で犯人がわかる人いるのでしょうか…?)
クリスティの掌の上で転がされている感覚が、最高に気持ちよく、読み終わった後はアトラクションに乗った後のような充足感を味わうことができます。
アガサクリスティ作品の魅力
本作(文庫本)の最後には、赤川次郎先生の解説があるのですが、その解説を読んでとても共感できた箇所があります。
それは、クリスティ作品は残酷な殺人描写が少ないというもの。
本作はどうしてこんなにミステリー作品として純粋に楽しめるのかな?と考えた時に、
“人が死ぬ場面がグロすぎない”ことは大きいのではと思いました。
最近のミステリー作品の中には、グロくて残酷な描写があるものが多い気がします。
私は残酷な殺人シーンに抵抗は無いので読めてしまうのですが、その場面の印象が強すぎると、もう殺人がクライマックスになってしまうのです。
その後にどんな驚きの謎解き展開が来ても、あの殺人シーンの印象に比べたら…とそれを上回るラストを迎えられなくなってしまいます。
本作『そして誰もいなくなった』は、人が死ぬシーンは多くありますが、殺人場面や死体の描写は生々しすぎないため、それよりも純粋なストーリーの行方に集中して読むことができます。
だからこそ、広く世界に愛される作品になっているのではないでしょうか。
殺人場面ではなく、人々の心理描写やストーリーに力を入れており、読む人々の心を惹きつける。
クリスティがミステリーの女王と呼ばれる所以が分かったような気がします。
こんな人におすすめ
☆ハラハラドキドキする読書体験がしたい
→最後まで息つく暇がありません
☆有名作品に触れてみたい
→言わずと知れたミステリーの女王の代表作
☆海外文学は難しそうでとっつきにくい
→ストーリーが分かりやすく読みやすいはず
次はオリエント急行の殺人を再読したくなりました。
はるのゆき