はるの本棚

口下手な私の人生と推し本について。

【エッセイ】人間椅子 小2のころ小人になる妄想をしていた

 

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小学校2年生の時、ある妄想をするのが好きでした。

その妄想は、“自分が小人になって、クラスメイトの様子をこっそり覗けたなら”というもの。

妄想癖があるのは昔からですが、この遊びのミソは「自分が小人である」という所。

つまり周りが私を認識していない状態で、クラスメイトを覗き見るのです。

要は透明人間ですが、小人の方が少しはファンシーでしょうか?笑

 

妄想は膨らみます。

活発で可愛らしいAちゃんBちゃんは、どんな内緒話をしているのかな

斜め後ろのCくんは、昼休みにどんな絵を描いているんだろう

先生が授業中に見ているノート、何が書いてあるのかしら

 

小学2年生の妄想なんて、邪心のない可愛らしいものです。

 

しかし大人になって当時を振り返ると、中々に黒い心境であったような気がします。

周囲の人間の状態を、そうとは知られずに把握したい”わけですから。

 

それを知ってどうするのか?そこまでは分かりません。ただ彼女らが、自分にとって害がない、良い人間だという確証が欲しかったのだと思います。

 

私が活発で愛嬌のある、積極的な女の子だったなら

こんな妄想に頼らずとも良かったはず。

「何話してるの?」「Cくん何書いてるの?」「先生のノート見せて」

一言話しかければよかっただけ。

 

しかし、人見知りで、口下手で、懐疑的で、嫌われるのが怖くて、教室の隅で本を読んでいるのが幸せだった私。そんな勇気はありません。

 

だから、「小人」なのです。

自分という存在を極限まで消したい。でもクラスメイトと密に関わりたい。

自分は相手を知っている”。でも“相手は私の感情を知らない”。

この一方的な関係性が、安心感をもたらすのです。

 

どれだけ望んでも、都合よく魔法が使える妖精さんが、私を小人に変えてくれることはありませんでした。

でもこの妄想で、暇な休み時間が幾分か楽しいものになりました。

 

 

小学生の妄想と、江戸川乱歩の名作『人間椅子』を一緒くたにしてはいけません。

でも怖いぐらいに分かるのです。登場人物の心情が(肌に触れたいなどマニアックな部分は置いといて)。

 

人間が抱くちょっとした妄想を、ここまでホラーにできるのが、さすがは江戸川乱歩さん。

そういえば『屋根裏の散歩者』も似たような要素があるよなぁ。

乱歩さんも内向的な人間だったりするのかしら。

 

はるのゆき